販売店契約で起こりやすいトラブルを避けるための3つのポイント 前編

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海外の販売店との契約について島津弁護士にインタビューをしました。

深野:今日は横浜市にある、R & G 横浜法律事務所にお伺いしております。
こちらの法律事務所に所属する、島津弁護士に、販売店契約で起こりやすいトラブルと避けるための3 つのポイントについて、ご解説いただきます。

深野:島津さん、今日はお忙しいところありがとうございます。

島津:こちらこそ、ありがとうございます。

深野:まず、このニュースレターをご覧になっている方に向け自己紹介をお願いします。

島津:はい。ただ今ご紹介をいただきました、弁護士の島津圭吾と申します。
みなとみらいにある、R & G 横浜法律事務所というところに所属し、活動しています。

私は2011 年12 月に弁護士登録をしまして、今現在7 年目になります。
2012 年から2014 年の間に、企業の保安部に出向していました。

その企業は海外進出をされており、その中で英文契約書の作成などチェックをたくさん経験してきました。また、2016 年には香港の法
律事務所で研修をしまして、そちらでは海外の業務を経験することができました。

2014 年以降は今の事務所に戻り、英文契約書の作成、チェックといったことも含めて引き続き、企業法務もさせていただいているという経歴になります。

本日は皆さまのお役に立てればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

深野:ありがとうございます。
さっそくですが、今日は3 つのポイントについて教えてください。

1 つ目が「基本的な考え方、構造」についてですね。

その次が何でしょう?

島津:「販売店の実際の働きやトラブルについて」です。

深野:そして3 つ目が・・・

島津:「販売店契約の終了という場面」になります。

深野:終了という場面ですね。
この3 つを最低限押さえておけば、しっかりとした契約書ができると。

島津:そうなります。

深野:分かりました。ではこの後、解説をしていただきますのでよろしくお願いします。

起こりうるトラブルを事前に想定する

深野:それでは販売店契約起こりやすいトラブルを避けるための3つのポイントの1つ目、「基本的な考え方、構造」についてお伺いします。
まず私からの質問なのですが、販売店契約書に共通する考え方ですとかスタンス
というものはどのようなものなのでしょうか。

島津:はい。ご質問ありがとうございます。2 つありまして、1 つが、まずトラブルが起きないように、契約書にはっきりと条文を書き込んでおくということです。
事前にこの取引でどういったトラブルが起きそうかということを予想しておいて、それに対応した条文を作るということが大切になります。

深野:ということは、未然に起きそうなトラブルというものをある程度リストアップしておくということが必要なのでしょうか。

島津:そうですね。そういったリストを持っておくということは、準備として非常に大切になります。

深野:例えば、島津さんがこれまで見てきた事例で、よくあるトラブルというのはどんなことがありますか?

島津:例えば、販売店として選んだところがきちんと動いてくれないとかそういったようなこともありますし、そもそも販売店だと思っていたのに代理店になってし
まっていた、といったような、予想外のことになってしまうこともあります。

深野:ありがとうございます。それでは次の質問になるのですが、販売店の立場についてどのようなトラブルが考えられますか?

島津:販売店の立場というと、ちまたではよく販売店と代理店を区別しないで販売代理店というふうに言ったりすると思うのですが。

深野:特に日本国内ではかなり混乱した表現が多く、違いを良く理解していないことも多いですよね?

島津:そうですね。日本国内では普通に販売代理店と言い習わしていると思うのですが、海外では販売店と代理店というのは明確に違っています。

深野:英語で言うとそれぞれ何と言うのでしょう?

販売店と代理店は、表記も役割も異なる、全くの別物

島津:販売店だとDistributor(ディストリビューター)、代理店だとAgentエージェント)になります。

深野:単純に単語で表しても違うわけですし、それぞれにおいての立場、役割も全く違うわけですよね。日本国内では立場や役割があいまいなままで通じてしまっても、海外ではそのあたりをしっかりと記載しておくということがとても重要であるということになるのでしょうか。

島津:はい。そうですね。

深野:わかりました、ありがとうございます。続いての質問になります。販売店と代理店の違いは理解できたとして、ではトラブルを避けるためにどんなことに注意したらよろしいでしょうか?

島津:はい。先ほどの話の続きになりますが、販売店、つまりディストリビューターなのか、代理店(エージェント)なのかということを明確に契約書に書いておくということが必要です。

特にディストリビューターの場合は、日本企業が販売店に物を売って、その販売店に再販売してもらうという取引になりますし、代理店だと、日本企業が代理店に現地で自分に成り代わって売ってもらう存在ということになります。そのため代理店の場合、代理店が現地で行った取引は、トラブルも含めそのまま日本企業にかぶってくるということになります。

深野:ということは、販売店というのは主に日本企業の製品を輸入して再販売する存在ということになるのでしょうか。

島津:そうですね。

深野:では、一方の代理店というのはどういう役割になってくるのですか?

島津:代理店というのは結局自分たちでも輸入、仕入れはある程度するとは思うのですが、現地での営業活動だとか販売活動を全部委任するというか、委ねてしまうという形です。

深野:なるほど。そうすると商流は、場合によっては日本のメーカーが現地のお客さまに直接販売して、販売手数料を代理店に支払うというような流れになるわけですね?

島津:そうですね。そういうこともあり得ます。

条文に定めておくことで、想定外の動きをされた際のリスクマネジメントにもなる

深野:そういうこともあり得るわけですね。分かりました。
ありがとうございます。

質問を続けていきます。

販売店の活動地域についてはどんなトラブルが考えられますか?

島津:一番考えられることは、例えば契約書に中国としか書いていなくて、中国といっても中国本土もあれば、香港もあればマカオもあればということです。

日本企業が本当は本土での展開しか考えていなかったのに、知らずのうちにマカオで活動されてしまったり、香港で勝手に活動されてしまったりというようなことが起きることです。

そういった地域をはっきりと定めておかないと、本来活動してほしかったところでは活動してくれなくて、逆に活動してほしいと思っていなかったところで活動されてしまうというような恐れがあります。

深野:私の過去の経験ですと、中国本土を委任していた販売店が台湾でも販売をしたいと言い出したことがありました。

ところが台湾にも販売店があったのですが、本土の販売店には「台湾は除く」というような条文がなかったために少し調整というか、説明が必要になったことが
ありました。

あとはシンガポールの企業が、テリトリーはシンガポールの国内となっているのにもかかわらず、東南アジア中に販売をしていたとかの実例もあるのですが、やは
りそういったときに条文にしっかり明記されているかどうか、ということですね。

例えば、ある国を対象にしていたとしてもこの地域は除くとか、そういったところまで具体的に明記しておくことがやはり重要なポイントになってくるのですね。

島津:まさにその通りです。

深野:そうしましたら、私が少し話してしまったのですが、そういったトラブルに気を付けるためには、どんなことに注意したらよろしいでしょうか?

島津:まずやはり、まさに深野さんにおっしゃっていただいた通り、地域というものを明確に、解釈の違いが出ないようにお互いがしっかり認識し、条文にするということになります。

「独占契約」「非独占契約」の認識の違いに注意

深野:その国同士の文化や認識の違いも含めてということですね?

島津:そうです。

深野:お互いに、両者でちゃんと認識をしておく、と。

島津:おっしゃる通りです。そういった食い違いが出ないように、地域、テリトリーをまず明確に定めて、あと「そこでしか活動ができません」ということをきちんと定めておくことです。

しっかりと合意を取ったうえで定めておくということになります。

深野:分かりました。次の質問なのですが、よく販売店には独占的、非独占的といった種類があるようですけれども、これはどのように違うのでしょうか?

島津:はい。独占的と非独占的の大まかな違いですが、一番大きいところは、「独占的」ということになりますと、日本企業としては、その地域ではその販売店しか指名できないということになります。

一方の「非独占」ということになりますと、日本企業としては、その販売店以外
の企業も指名するということが可能になります。

深野:なるほど。私も昔よくあったのですが、最初から「独占契約をください」という前提で交渉してくる会社というのは、特に地域性もあったりして、慣れていないと、急に結構大きいことを言われたりしてこちらもびっくりしてしまいますので気を付けないといけないですね。

 そういった場合、この独占契約、非独占契約に関して、どんなトラブルが考えられるのでしょうか?

島津:特に問題になるのが独占的なのか、非独占的なのかということを条文に書き込んでおかなかった場合です。

その場合に何が起きるかというと、販売店としたら「うちだけ独占的に指名してくれたのだ」と勝手に期待していて、一方の日本企業はそこだけに任せたいとかそういうつもりがなく、他の販売店さんもいい企業があったらそっちも指名したいと思っており、実際に他の販売店と交渉していたところ、先に契約した販売店から「本当は独立的なのだから契約違反ではないか」と言われてトラブルになるという恐れがあります。要はそれぞれの思い違いが原因なのですが、そういうことは決して珍しくありません。

条文で明確にしておかないと、お互いが自分たちに都合の良い理解や解釈をしてしまう

深野:少し私が経験したことについてお話させていただきます。
これは私がいた会社ではなくて、別の会社で起きた話なのですが、そこの話では、ある国で1 社しか販売店がないということでした。

他には販売店がなくて、しかし、その1 社とは、特に独占とも非独占とも何と
も書いていない販売店契約を作ってしまったのです。
そしてお互いにサインをしてしまった。

日本のメーカーとしては契約までの会話の中では“御社しかない” とは言ったけれど、「御社独占」をするとは言っていないしそのような契約を結んだつもりもな
い。しかし、相手は独占の話をもらったと思っていた、というようなトラブルが実際にありました。

そういった場合というのは事前に、島津さんがおっしゃった通り、「ノンエクスクルーシブ(独占的ではなく実施するだけの権利)で非独占です」というような内
容を明記しておくべきだったということですね。

その会社の場合、書類には、ただの「アグリーメント(合意)」しか書いていなかったのです。「独占」とも「非独占」とも明確に描かれていない。「一緒に頑張っていきたい」という意味が微妙なニュアンスで、それを相手が真に受けてしまったということですが、思わせぶりな発言をした、もしくは相手にそう思い込ませてしまったという会社のほうにも問題があるといえます。

ただそういう会話に気を付けるとともに、契約書における、一つひとつの抜けが後のトラブルにつながっていくということですね。

島津:そうですね。まさにそういった条文が抜けていることで、お互いが違った理解をしたり、お互いが良いように解釈したりします。

その場では問題にならなくても、後々食い違いが起きて大きなトラブルに発展してしまう恐れがあるということです。

深野:なるほど。ありがとうございます。今回は、その3つのポイントのうちの「基本的な考え方、構造」についてお伺いしました。

これまで話していただいたこと以外に、付け足すことはございますか?

島津:はい。冒頭にありました、もう1 つ販売店契約に共通するスタンスの2 つ目としては、今はトラブルを避ける、トラブルにならないようにあらかじめ準備し
ましょうというお話でした。

トラブルになってしまったときに、いわばマニュアルとしてこの契約書さえあればいいのだと、契約書の通りに対応しさえすればいいのだというふうに、きちんとはっきり書き込んでおくことです。

そうすれば、もし何かあったときにもその契約書を使って「ここにこう書いてあるから、私はそれをもとにあなたにこういうふうに言っているのです。

契約を結んでいる以上、あなたにはこういう義務がありますよ」というふうに伝えられるようにしておくということも、契約書の狙いになります。

深野:分かりました。次回は、販売店の働き、トラブルについてお話いただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

島津:こちらこそ、ありがとうございました。

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【Profile】島津圭吾 R&G 横浜法律事務所所属弁護士。海外取引法務を得意とし、取引基本契約、秘密保持契約、技術支援に関する契約、ライセンス契約、不動産賃貸借契約、販売代理店契約、プロジェクト契約、合弁契約等を取り扱う。海外取引が初めての相談者にも丁寧に対応と分かりやすい解説に定評がある。

問い合わせ:R&G 横浜法律事務所 TEL:045-671-9577(代表)e-mail:shimazu@rglo.gr.jp

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